12/7 新潟水辺シンポジウム2013開催レポート

新潟水辺シンポジウム2013は、「子どもたちが楽しみ、挑戦できる水辺に」というテーマを掲げて、12月7日(土)13時30分より新潟市のクロスパルにいがた4階映像ホールにて、71名の参加者(登壇者、スタッフ含)を得て開催されました。今回のシンポジウムでは、サブテーマを~第1回・子どもの川遊びが永続できる条件づくり事始め~としていますが、第1部に「若者にとっての水辺の魅力と親水環境づくり」、第2部に「大人のすべき水辺舟利用の条件づくり」という二つのパネルディスカッションの場を設定して、話し合いを展開しました。

会場

大熊 孝・会長は「開会挨拶&活動報告」において次のように語りました。「水辺シンポジウムは数年間、鮭と川を考えることで進めてきたが、昨年は水辺のまちづくりを考えたので、今年は水辺で子どもたちをどうやって育てていくかを考えてみたい。」、「今年度の活動報告3点→①韓国蔚山(ウルサン)市の水辺事情視察の報告(水質など環境対策では韓国に追い抜かれた)、②通船川のカヌー活動を広げる舟小屋募金の取り組み状況報告(必要額230万円、現在の集計額190万円)、③今秋の鮭の遡上状況の報告(宮中ダムで408尾を確認、今後1000尾は確認したい)」、「信濃川の流量が増えたことは、鮭の遡上だけでなくラフティングを楽しむことも可能にした。今年国交省が危険なブロックを除去してくれたが、水で遊ぶことに理解を示してくれるようになったことに、姿勢の変化を感じる。」、最後に大熊代表が提起する“川の定義”を説明した上で、「川は人を育てる場である・・・今日はそれについて議論したい」と結びました。(川の定義については、ここをクリックしてご確認ください。→川とは?

市長

 

次に、ご多忙のところを駆けつけていただいた篠田 昭・新潟市長から、激励のご挨拶をいただきました。(市長は挨拶後に退席)ご挨拶の中には次のような言葉がありました。「水辺環境の改善と水と親しむ活動に尽力いただいていることに感謝している。・・・(中略)・・・ 通船川(河口の森)では、皆さんの活動を受けて、トイレ設置等の検討に着手をはじめている。新潟市の水辺に関しては、鳥屋野潟の整備も始まるので、今後は潟に学び潟を楽しむ活動に取り組んでゆきたい。」

第1部パネリスト

パネルディスカッションの第1部「若者にとっての水辺の魅力と親水環境づくり」は、コーディネーター佐藤 哲郎(事務局長)、サブ・コーディネーター戸枝 邦子(世話人)の進行で進めましたが、第1部のパネリストとして①大熊 美桜(みお)さん(金沢泉丘高校1年、吉野川「川の学校」スタッフ)、②塚野 卓郎くん(万代高校2年、端艇部)、③太刀川 舞さん(万代高校2年、端艇部)、④小林 史祉(ちかし)くん(万代高校2年、端艇部)の4名の方々が登壇し、次のような発言をおこないました。

美桜

①    大熊 美桜さん(金沢泉丘高校1年、吉野川「川の学校」スタッフ)・・・中2のときに「川の学校」に参加して、今年から高校生スタッフとして活動に加わっている。「川の学校」(2001~)は吉野川の5カ所で15日間のキャンプをして、川の楽しさを伝え、「川ガキ」を育てる活動を続けている。野田知佑・校長の言葉で最も印象に残っているのは「川の学校では君たちは自由だ。何をやってもいい。」という言葉だ。川で好きなことを見つけて、思いっきり楽しむことができるようになっていくのがいい。川で遊んでいるうちに、どういうところが危険か、どんなところに魚がいるか、教えてもらわなくともわかってくる。高校生スタッフは、自分自身が川で思いっきり楽しむ「川ガキ」に近いし、川の表情や生き物を良く知り、川を楽しむことを知っている大人がいて、そういう人たちに憧れて私はスタッフになった。私の住む金沢にも、全身川に入って遊べるきれいな川があったらいいと思うが、そういう川は無く、子どもの頃から危険と言われて遠ざけられてきたように思う。金沢市内には犀川と浅野川が流れているが、浅くて段差があり、舟には乗れない。石川県内では、手取川が大きくきれいで、川の活動もあると聞いているので、行ってみたい。

 

②    塚野 卓郎くん(万代高校2年、端艇部)・・・端艇部には、他の高校ではできない経験ができると思って入部した。カヌーにはカヤックとカナディアンがあり、漕ぎ方も違う。はじめは乗れなくて、何回か落ちて全身濡れて、乗れたときは達成感を感じた。早く漕げるようになり、自由に操れるようになったと実感したときに、また達成感を感じることができる。通学路として通船川を見て育ってきたが、カヤックに乗って川から見る風景はぜんぜん違って見えた。魚が水面を跳ねたり、亀が顔を出していたり、ブロックの陰の小魚などの発見もある。端艇部の経験で川を身近を感じることができたが、たくさんの人々の関心が川に向くように、カヌー体験などの活動を広げるべきだと思う。通船川で漕いでいると黒いヘドロがモワッと浮きあがってくる。きれいな川になってほしい。はじめは川に落ちたときに水を飲んだが、慣れると落ちても飲まないようになった。日本には吉野川のような川があるんだなーと知って、卒業後はいろんな川で漕いでみたいと思っている。

 

③       太刀川 舞さん(万代高校2年、端艇部)・・・端艇部には、好奇心と新たなことに挑戦する気持で入部したが、子どもの頃に母に連れられてカヌー体験をした記憶が、動機のひとつとなっている。子どもの頃の体験の影響は大きいと思う。カヤックは体全体を使って乗る必要があり、落ちては乗るを繰り返して、乗れるようになったときに自信がついた。栗ノ木川の桜まつりに参加したときに、道路からは気づかなかった川からの風景に感動した。卒業後は、普通に暮らしていたらカヌーに関わることは減ると思うので、川と関わった経験を活かして、川に関する行事などに参加したいと思う。自分が親になったら子どもに川のことを教えたり、川とふれあえるようにしてあげたい。通船川の川底には何があるかわからないと先輩たちから言われている。突き出ていた鉄筋で足を切ったこともある。感染などが心配だ。子どもが遊ぶためにも川の環境は重要だ。きれいで危険の少ない川なら親も安心できる。

1部パネリスト

④    小林 史祉くん(万代高校2年、端艇部)・・・他の高校に無い部活なので興味を感じて入部した。卓球をやっていたが諸事情(?)によりカヤックを漕いでいる。カヤックは慣れてくると本当に楽しい。楽しいけれど難しさもあって、奥の深さを感じている。川から見る風景は陸上とは違っている。建物など遮るものが無いので、月がとても綺麗に見えることがある。大会にも出ているので、より速くうまく漕げるように取り組んでいる。卒業後は部活動の経験を活かし、川に関する行事があれば積極的に参加したい。私は下痢をしたことがないが、通船川の水で下痢になった話は聞いたことがある。川底にはヘドロに混じってガラスの破片や木片があるので、不用意に足をつくことができない。沈んでいる危険物は怪我の恐れがあるので、無くしていければと思う。通船川が子どもも遊べるような安全な環境になることを願っている。吉野川の「川の学校」の存在を知り、自由な感じがとても羨ましいと思った。

 

第1部の最後に、4名のパネリストから、今回のシンポジウムに登壇して心に浮かんだキィワードを一言紙に書いて掲げていただきました。結果は次のとおりでした。小林 史祉くん→「川はきれいが一番!」、 太刀川 舞さん→「川で遊ぶのは、楽しいのだ!」、塚野 卓郎くん→「トイレを作ってください」、大熊 美桜さん→「川底が見える川」

第2部 1 パネルディスカッションの第2部「大人のすべき水辺舟利用の条件づくり」は、コーディネーター相楽 治(副代表)の進行で進めましたが、第2部のパネリストとして①石田 昌知(まさる)氏(万代高校教諭、端艇部顧問)、②安澤 裕志 氏(NPO法人・ねっとわーく福島潟 事務局長)、③谷田(やつだ)健六 氏(とやの潟を育む市民の連絡協議会 会長)、④横山 通(NPO法人・新潟水辺の会 通船川環境事業部 部長)の4名の方々が登壇し、次のような発言をおこないました。

 

①    石田 昌知 氏(万代高校教諭、端艇部顧問)・・・万代高校・端艇部は、通船川の山の下排水機場の付近が主な活動の場となっている。部員は12名(女子3名)。ほとんどが高校に入って初めてカヌーにふれた生徒だ。ポリ艇からはじめてレース用のカヤックに乗るまで、1~2か月かかる。レース用に乗ったとたんに転覆する生徒が多い。水を飲まないように指導しているが、水遊びに慣れてない生徒は飲んでしまう。目がものもらいになりやすいようだ。通船川を利用している理由は、近くて目が行き届くことと閉じられた安全な水面だからだ。水質を度外視すれば通船川が最適だ。万代高校の端艇部員は、川に落ちたくないので、レース艇に乗れるようになるのが他校より早い。しかし、慎重に乗っているので、スピードが上がらないようだ。私は笹川流れの近くで育ったので、海や川で遊んでいたが、地域の大人たちが見守る目線を感じながら遊んでいたという感覚がある。吉野川の「川ガキ」の存在は、昔は当然の姿だった。通船川に艇庫ができると聞いているが、そこに何艘かの舟が用意されれば、子どもたちに体験を広げる器はできると思われる。しかし、安全を見守り指導する大人の目が必要になる。わが端艇部員、部員のOB・OG、その他経験ある大人の活用ができたら良いと思う。

2部

②    安澤 裕志 氏(NPO法人・ねっとわーく福島潟 事務局長)・・・現在62歳の私より少し上の世代は潟で遊んでいたが、私が小学生の頃から学校にプールができはじめ、川で遊んではいけないという文化に変わってきて、舟からも離れてきた。私たちにもう一度潟で遊びたいという思いが募りはじめ、それが環境教育の一助になればいいと思った。どうせやるなら自分たちで楽しみながらやろうと、自分たち流で潟舟を6艘造った。技術が無い私たちは、舟釘でつなぐところをビスどめにし、板に防水シート貼りまた板をはって簡略な方法で造ってみた。福島潟でその舟を使って、高校生とともにオオヒシクイの餌になるマコモの植栽、ホテイアオイの駆除などを行い、毎年4月には地域住民・小中学校とともにクリーン作戦を行っている。流入河川があるのでゴミは多い。潟舟体験は、一般運行が年間15日間(GW、夏休み、9月)20回で、乗舟者1,045名、小中学校潟舟案内が4校、225名に陸と水面から潟体験をしてもらっている。水面からの目線の素晴らしさを知っていただき、自然を考えたり潟のファンになっていただけたら嬉しい。体験者増と自然保護の調和、安全の確保、船頭の確保が課題となっている。

2部の4

③    谷田 健六 氏(とやの潟を育む市民の連絡協議会 会長)・・・鳥屋野潟で舟を見なくなって、今は葦が伸び放題、ゴミは捨て放題の状況だ。鳥屋野公民館で活動するいろんな団体と連携して、鳥屋野潟の環境を変えていきたいと取り組んでいる。県の築堤整備計画に、勾配や遊歩道などに関する要望を反映することができたが、今後は3箇所に整備予定の公園について、それぞれ特色を持った公園とするように提案していく。これからの鳥屋野潟のあり方については、「自然を豊かにする」、「親水機能を高める」、「学習と体験の場にする」、「安全性を高める」という視点から提案していきたい。子どもたちからは、舟に乗ってみたい、釣りをしたいという要望が多い。本能的にそうした欲求があるのではないかと感じていて、叶えてやる必要もあると感じている。大人は遊べる環境を整備し、潟の恵みを食すなど、体験付加価値と環境認識を深めてゆけるようにしたい。都市の中の潟という全国的にも珍しく貴重な存在の鳥屋野潟を、愛し活用してゆきたい。

 

④    横山 通(NPO法人・新潟水辺の会 通船川環境事業部 部長)・・・川面に人の花を咲かせたい。新潟市民は二世代にわたって川に背を向け、川で遊ぶことを忘れてきた。これからは少しづつ川に目を向けてもらう必要がある。私たちは川清掃とカヌーによる川遊びを続けている。通船川・栗ノ木川で、地域住民・子どもたちに体験してもらう舟遊びイベントをやっている。板合わせに乗舟したり、カヌーを自分で漕ぐ体験ができる。舟に乗せてもらうことと、自分で漕ぐことは大きく違う。できることから経験を広げていきたいと、新潟市内のあちらこちらの河川でカヌー下りを始めている。(船外機付の救援船がついて)そして、通船川~阿賀野川~小阿賀野川~信濃川(四河川)をめぐるカヌーツアーも考えている。市民や子どもたちにカヌー体験を広げるには、カヌーの数をある程度用意しておかなければならないし、指導したり救助したりする先達がいないと川との関わりを再生することはできない。そのための拠点として、通船川にカヌー艇庫(万代高校端艇部と半分づつ共同使用)の建設を予定しており、募金活動を行っているところだが、沢山の寄付金をいただいていることに感謝している。

2部の2

 

4名のパネリストの発言を受けて、コメンテーターの大熊 孝 代表が次のように語りました。「水辺の会としていろいろやってきたが、それぞれが単発で継続化していない。万代高校は日常的に川で活動しているし、吉野川の川の学校は15日間川に入っている。きちんと継続してやらないと身体に沁み込まない。川の学校は13回やっているが、卒業生がスタッフとして戻ってきて、指導者として循環する仕組みができてきている。通船川の船小屋を拠点とした活動には、万代高校・端艇部の卒業生に戻ってきてもらえると嬉しい。」

 

第2部の質疑応答で、いくつかの質問と意見が出されましたが、その中には次のような意見がありました。(意見:中村)五泉とげその会では早出川清流スクールをやっている。県内にも荒川などきれいな川があるのに、指導者がいないので、川が活動の場になっていない。川は国や県が管理するものになってしまって、住民が関われなくなっていることも、川から人を遠ざけた原因ではないか。

2部の3

意見を受けて大熊 孝 代表は、次のように語りました。「川で遊べないようにしたのは土木行政だが、川で遊ぶなと言うのは教育委員会である。“良い子は川で遊ばない”という言葉になぜ抵抗できなかったのか。それは我々が英国にあるような“川で遊ぶ”文学を持っていなかったせいだと、私は思っている。英国には、アーサー・ランサムやケネス・グレアムなどが1900年初頭に著した“川遊び”を礼讃する国民的児童文学がある。汚れた川をきれいにし、夏休みに川で遊ばないと気が済まない英国民の心には、少年期に読んだ“川遊び”文学の蓄積があるようだ。100年くらいかかるかも知れないが、川に対する共通の気持を国民全体で持てるようにならないと、川をきれいにしていくのは難しいかも知れない。」

第2部 2

第2部の最後に、4名のパネリストとコメンテーター(大熊)から、今回のシンポジウムに登壇して心に浮かんだキィワードを一言紙に書いて掲げていただきました。結果は次のとおりでした。石田 昌知 氏→「遊び心と継続 大人たちのゆとりが子どもたちに伝わる」、安澤 裕志 氏→「楽しく学ぶ」、谷田 健六 氏→「川はつなぐ(団体を、学校を) 川は山とつなぐ 川は海とつなぐ」、横山 通→「NPOの稼ぎと務めを再考しよう」、大熊 孝→「子どもたちが繰り返し参加できる工夫を(共通スタンプ券の作成・15回以上で卒業)」

 

第2部のパネルディスカッションを閉じる際に、コーディネーターの相楽 治(副代表)は、次のように語っています。「今回のシンポジウムのテーマについて、言い出しっぺは私だが、その根底には、私のふるさと“福島の原風景に川が無くなっている”こと、万代高校の江龍田(えりゅうでん)先生の“カヌー少年団みたいなものがあれば”という言葉があった。大人が川で遊ばないのは、川を知らないからだと思う。昔の記憶や技の伝承も大切だが、今日の議論を聴いて、水辺経験者の高校生の皆さんには大人の教育を期待したい。このシンポジウムの議論を積み重ねて、いずれ河川管理者や地域の銀行なども呼べるシンポジウムにしてゆきたい。」新潟水辺シンポジウム2013は、山岸 俊男 副代表が閉会挨拶を行って、16:50に閉じました。           (報告:佐藤 哲郎)

 

このレポートはホームページ掲載用に推敲・割愛した短縮版として作成されております。ご要望があれば、この原本となっている完全版をお送りいたしますので、事務局長の佐藤にご連絡ください。

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