通船川(阿賀野川古道)でカヌー遊びができることを知っていますか?

はじめに

 

大分前のことであるが、1992年8月1日~2日に第8回水郷水都全国会議が新潟で行われた。当時、当会は「新潟の水辺を考える会」と称していたが、この大会を開催するにあたって全面的に協力して、盛会裏に終えることができた。

 

その第30回大会が2014年12月6日、7日に広島大学で行われる。この第2分科会「伝える・つなげる:環境教育・エコツーリズム・環境市民活動など」で通船川での活動について発表する。その原稿を掲載しておく。

 

 

通船川とは?

 

阿賀野川はかつて信濃川に河口付近で合流していたが、1731年に阿賀野川が今のように直接日本海に流れるようになり、その残った河道が通船川と呼ばれている。通船川は舟運が盛んで、1878年には探検家のイザべラ・バード(1831‐1904)が通ったという記録もあり、昭和初期には外輪船が走っていた。流域面積は約16.85km2、流路延長は約8.kmである。

 

通船川と河口の森の位置

通船川と河口の森の位置

 

1964年の新潟地震で、地盤の液状化現象などで通船川の堤防が壊れ、津波による被害が出た。その復旧では、堤防を築かず、阿賀野川と信濃川の流入口と流出口に水門・閘門と排水機場を設置して、水面標高をT.P.-1.65mに設定した、いわゆる低水路方式が採用された。日本海の海面はおおむねT.P.+0.5 mであるので、その水位差は2m以上ある。1970年代は、水質が悪化し、全国でワースト5にまでなった川だった。その後、浄化用水の導入や下水道の整備で水質が徐々に改善され、2004年1月には環境基準がE類型からD類型(BOD8mm/l)に改訂された。

 

 

通船川が高校カヌー部の練習場になる

 

カヌーでの親水活動

カヌーでの親水活動

 

新潟市立万代高校には端艇部があり、国体などのカヌー競技に出場している。その練習を信濃川や郊外の新川などで行っていたが、学校の近くで練習したいということで、2008年から通船川の河口の森(図参照)付近で練習を始めた。また、NPO新潟水辺の会(以下水辺の会)も、舟による通船川の清掃活動を行うとともに、親水活動の一環として定期的にカヌー遊びを開始していた。

 

舟小屋建設前の駐車場

舟小屋建設前の駐車場

 

ソーラ電力の照明灯

ソーラ電力の照明灯

 

そうした状況下で、新潟県新潟地域振興局新潟地域整備部によって、親水機能を目的として、写真の桟橋が2010年3月に整備された。さらに、2013年3月に駐車場の舗装整備が、2013年3月と9月にソーラーによる照明灯2基が設置された。こうした整備によってカヌーの練習がし易くなったが、万代高校の生徒達は元の艇庫から桟橋まで数百mの距離をカヌーを担いでこなければならなかった。水辺の会としても、船外機付きボートやカヌーを数艇所有しており、その置き場に困っていた。舟小屋を作りたいが、そのためにはまず河川敷の占用許可を得る必要があった。

 

 

河川敷の占用と募金による舟小屋の建設

 

河川敷の占用主体は、従来、公益的な観点から公的な機関が原則であったが、2004年から国交省は特例措置として民間にも占用許可を出してきた。これを2011年から地域での合意が得られるなら一般化するということになった。新潟では、2012年2月新潟地域河川敷地利用調整協議会が開かれ、その後の調整の結果、2013年3月に通船川河川敷の占用許可が受けられるようになり(新潟県報第22号・平成25年3月19日発行)、水辺の会が占用許可を取り、河口の森に舟小屋建設が可能となった。

 

万代高校吹奏楽部演奏でのオープニング

万代高校吹奏楽部演奏でのオープニング

 

舟小屋の外壁に設置した寄付者銘板

舟小屋の外壁に設置した寄付者銘板

 

そこで、2013年9月から舟小屋建設の資金を募金で集めることにした。2014年3月までに、121人から約240万円の寄付があり、舟小屋を建設することができた。竣工式は、4月12日に神式の安全祈願をはじめとし、関係者の挨拶、万代高校吹奏楽部の祝賀演奏など、楽しく行われた。寄付者に感謝の意を表するために、希望しない者は除き、写真のように寄付者銘板を設置した。舟小屋は万代高校と新潟水辺の会が共同で使うことにした。

 

新潟市が設置してくれたトイレ

新潟市が設置してくれたトイレ

 

 

舟小屋とトイレの位置関係

舟小屋とトイレの位置関係

 

もう一つ困ったことがあった。それはトイレが近くにないことであった。その状況に新潟市が反応してくれて、写真のようなトイレが2014年8月に設置されたのであった。このトイレ掃除は水辺の会が新潟市から依頼を受け行っているが、万代高校端艇部の部員にも手伝ってもらっている。

 

 

カヌー教室への展開

 

新潟県、新潟市、民間の協働よって、カヌーを恒常的に楽しめる空間が構築された。2015年夏期には、新潟水辺の会としては万代高校OBなどの協力を得ながら市民向けのカヌー教室を開催する予定である。このカヌー教室は、基礎から阿賀野川、信濃川などへの遠征を含め、水辺の楽しさが身体に浸み込むように数回行い、いわゆる「川ガキ」を数多く育成することを目的としたい。

 

カヌー増艇にむけた寄付をお願いするチラシ(画像をクリックするとPDFファイルがダウンロードできます)

カヌー増艇にむけた寄付をお願いするチラシ(画像をクリックするとPDFファイルがダウンロードできます)

なお現在、カヌーを増艇するために、またもやカヌー寄贈をお願いするキャンペーンを行っている。

 

 

【リンク】

水郷水都全国会議東広島大会の案内