2011年7月新潟・福島豪雨災害の特徴-その3・晒川ダムの中止について-

今回の豪雨は7月28日から始まったが、実はこの日の午後、私が座長を務める新潟県ダム事業検証検討委員会(第7回目)が開かれ、十日町の晒川ダムと阿賀町の常浪川ダムを中止し、上越市の儀明川ダム、佐渡市の新保川ダムは事業継続という結論を出したばかりであった。ところが、十日町市では、二山豪雨の後半で、時間雨量120mm(十日町地域振興局観測所)といった豪雨があり、晒川流域で写真に見られるような大災害が発生した。早速、「晒川ダムは復活すべきでないか?」といった意見が寄せられたので、8月1日に個人的に現地視察を行うとともに、ダム検証委員会事務局と打合せをし、8月19日に第8回目の検証検討委員会を開いた。私を含め5人の委員の慎重審議の結果、晒川ダムの中止という結論を変えることはなかった。

平成23年7月新潟豪雨災害・晒川の惨状(上流から下流に向く。2011・8・1大熊撮影)

 

その理由を問われることが多いので、ここで要点だけを解説しておきたい。詳しくは、新潟県ホームページに第8回ダム検証検討委員会の資料が掲載されているので、それを見ていただきたい。

ダム中止を変えなかった理由は、まず、甚大な被害が発生したのは、田川合流点(晒川は信濃川右支川・田川の左支川である)から上流約300mの区間であり、さらにその上流のところは下の写真のように、この洪水をうまく通過させており、川沿いの人家に被害が発生していなかったことである。要は、下流部分の河道改修をきちんと行なえば、今回の洪水を流しうると判断し、河道改修の方が費用が安く、時間的にも早く実現できるので、これを採用したということである。(ダムを採用した場合、財政上の問題で完成は少なくとも20年後から30年後になるとのことである。)仮にダムを造ったとして、ダムだけでは対応できず、下流300mの区間の河道改修は必要であった。どうせ河道改修が必要なら、ダムの調節を必要としない大きな河道断面にして、河道改修だけで対応するという方針をとったということである。

平成23年7月新潟豪雨災害・晒川の状況(上流から下流を向く。2011・8・1大熊撮影)

もう一つの理由は、今回、流木や土砂が大量に流れてきたのであるが、その発生源はダムサイトより下流域で山崩れなどが多発しており、ダムがあったとしても、それを防ぎきることはできなかったということである。この流木・土砂を防ぐには、市街地が始まる少し上流に、水や細かい土砂は通過させるが、流木と巨礫をとめる鋼管格子状の砂防ダムを作る必要があり、ダム検証委員会ではそのことを付帯条件として提言した。。

ダムはいずれ土砂で満杯となり、機能不全に陥る。治水の王道は、ダムでなく、河道改修にあると、私は考えている。

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