2012年「水枯れの信濃川・千曲川に鮭の道を拓く」鮭遡上報告-1

信濃川中流域の鮭遡上の記録更新中2012.10.26

 

今年も日本近海の海水温が高く、鮭の遡上が遅れ、あるいは回遊出来ずに減耗している個体も多いと、北海道大学の帰山雅秀先生より情報が入っていましたが、新潟県十日町市にある宮中取水ダム魚道(JR東日本旅客鉄道の管理するダム)では鮭の遡上ラッシュが続き、ここ3年間のデータを塗り替えて10月25日、鮭の遡上数は224尾を数え戦後最多となっています。(これまでの戦後の記録は、宮中取水ダム全量放流のあった2009年 160尾でした)

 

宮中取水ダム魚道での鮭の捕獲、捕獲後麻酔をして計測し、背びれにタグ(標識)を付けて上流に放流します

かつて信州の松本(千曲川の支川・犀川)や上田(千曲川)には、年間に数万尾の鮭の遡上する豊かな川でした。しかし、昭和初期に始まった電源開発事業によって、鮭の姿が全く消えてしまいました。

 

私たち新潟水辺の会は、川の生態系や文化を再生する象徴として、信濃川・千曲川に再び鮭の道を復活することを目指し、平成19年より信濃川や千曲川で鮭の稚魚放流を行ってきました。その成果の一端の結果が少しずつ出てきましたので随時報告します。

 

宮中取水ダムの構造改善工事は、平成22年度より2期に分けて実施され、今年3月19日に完了しました。その際、鮭などの回遊魚が上流まで安全に遡上できる環境づくりを目指し、魚が魚道を見つけやすくするため魚道に近い右岸側からのゲートからの放流を行っています。

 


同時に魚道構造改善工事を行い、出来るだけ多くの種類の魚が利用できるように、大型魚道、小型魚道、せせらぎ魚道の3タイプがあり、流れの速さや水深がそれぞれ異なって作られています。

昨年までの宮中取水ダム魚道          改造工事後の宮中取水ダム魚道と魚道観察室

 

また、魚道観察室も作られました。内部は大型魚道と小型魚道の両方を見ることができる窓がありますし、魚道を紹介したパネルも展示されています。

完成直後に来たときは、魚道観察室の窓からウグイが勢いよく遡上する姿を見ることができました。

  

 完成した魚道観察室(午前10時より午後4時まで見学可能)

内部の様子

24日訪れた時は魚道の観察窓にビデオカメラを設置して、遡上するサケを撮影していました。その際、遡上する鮭の動画と写真を見せていただきましたので写真をアップします。

  

 

この様に鮭にブナ色(婚姻色)は出ていますがまだすぐに産卵する鮭ではなく、もっと上流に向かう鮭であると思います。

今年遡上の鮭は、これまでの遡上記録を次々に塗り替えています。

★  1日の遡上数 10月23日38尾(これまでは2010年10月25日の15尾)

★ 2012年10月26日現在、鮭の遡上数 224尾となり戦後最多。

   (これまでの戦後の記録は、宮中取水ダム全量放流のあった2009年 160尾)

 

だが、昨年戦後最多の35尾を記録した西大滝ダム魚道(長野県飯山市と下高井郡野沢温泉村との境にある)への遡上は、まだ4尾のみの状況です。

西大滝ダム魚道に設置のトラップと10月10日に発見された2.5kgのオス鮭

これまで宮中取水ダム上流で放流された123尾の鮭が、まだ東京電力信濃川発電所の放流口付近で、生まれ故郷の水を求めて迷っているのかも知れません。

早く、生まれ故郷の千曲川の匂いを見つけて帰っていくことを祈っています。

 

これまで信濃川・千曲川に再び鮭の道を復活することを目指し、地球環境基金様(平成19~21年)と三井物産環境基金様(平成22~24年)からの助成を受けての活動を行ってきました。

今年度も10月より三井物産環境基金2012年度上半期活動助成決定となり、近日中に契約書を交わすことになりました。今後とも、信濃川・千曲川への鮭の遡上にご支援、ご協力をお願いいたします。

 

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