2012年「水枯れの信濃川・千曲川に鮭の道を拓く」鮭遡上報告-4

信濃川中流域の鮭の捕獲による遡上調査が終了しました。

宮中取水ダム魚道での遡上の記録は戦後最多となりました。(2012.11.14)

 

9月11日から11月10日までの鮭遡上調査では、新潟県側の宮中取水ダムでの捕獲は297尾で戦後最多となりました。しかし、長野県の西大滝ダムまで遡上した鮭は、今回の上田での発見の鮭も含め12尾(昨年35尾)で終えることとなりました。

 

「初鮭や ほのかに明けの 信濃川」 井上井月
先程、新潟水辺の会会員で岩手県立大学教授の金子与止男氏より、越後長岡出身と云われる井上井月(1822~1886)の句が送られてきました。正にこの句のように、昨日の11月13日午前6時20分、ほのかに明けの千曲川の梁場に、2年ぶりに鮭が遡上してきましたが息絶えていました。

 

上田市を流れる千曲川の中山梁場に遡上した鮭(上小漁業協同組合より写真提供)

信濃川を上流に向かうこと153kmで長野県となり、名前も千曲川と呼び方が変わります。その千曲川を遡ること丁度100kmに中山梁場があります。(先回の報告しました「上田 川と道の駅」の300m上流)

信濃川水系とダム及び中山梁場の位置

この鮭にはタグ(標識)が付いていました。このタグ(緑の100番)は、11月8日午前8時に宮中取水ダムの魚道で捕獲され、体重、体長、雄雌の判別後、タグを付け写真を撮って上流に放流された鮭でした。推測ですが11日の午後、西大滝ダム魚道の捕獲用網が撤去された後に魚道を通過し、13日の朝に上田に発見されました。

 

昨年宮中取水ダム魚道で標識を付けた鮭が7尾28.2km上流の西大滝ダムで捕獲されました。平均時速は0.3km/h(0.6~0.13km/h)でしたが今年のこの鮭は、西大滝ダムから上田の中山梁場までの約79kmを2日強で遡ったことになり、海洋並みの速度で遡上したと推測されます。

遡上した鮭にタグ(標識)の付いた鮭がまたも上田で発見

2年前の平成22年10月20日、この簗場で産卵後のメス鮭が1匹見つかりました。千曲川での鮭の遡上は65年ぶりの快挙でした。体長60センチ、体重1.6kg(産卵前約2kg推定)3年魚で、長野県のテレビ、新聞等で大きく報じられました。
そして今回も同じ簗場で鮭が発見されました。体長57センチ、体重1.65kgの2年魚でした。

 

かつて千曲川は、わが国屈指の鮭の生産地として知られ、河口から300km上流の長野県松本や上田まで、秋になると数万尾の鮭が遡上する自然豊かな河川でした。長野県の統計資料を見ますと、昭和初期(1933年頃)鮭の漁獲量は年間60トン~70トンが記録されています。

しかし、昭和10年代から始まった国策による電源開発事業により、長野県側では西大滝ダム、新潟県に入って宮中取水ダムが完成すると、長野県の統計資料から鮭の漁獲量は激減し、昭和20年には記録が無くなったのです。   5に続く

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