2013年 鮭の発眼卵埋設放流-1
◆ 鮭発眼卵からの自然孵化の試み
私たち新潟水辺の会は、単に漁業としての鮭漁の復活を目標とするものではなく、長野で産卵・孵化した鮭の稚魚が安全に日本海まで降り、再び成魚が河口新潟から長野まで遡上できる本来の川にしたいと願って、鮭の稚魚放流などの活動を2007年より行ってきました。
信濃川の支川・渋海川で自然産卵する鮭(2006年10月 鈴木孝枝さん撮影)
ご存知のように佐渡島では朱鷺の野生復帰に向けた放鳥の取組が行われています。これは本来、野生生物は自然環境下で存続することが望ましいと考えられているからです。日本国内では野生の朱鷺は絶滅してしまいましたが、朱鷺の存続が可能となる自然条件等を整えたうえで、過去に生態系を構成していた朱鷺を自然に放鳥する試みを行い、自然復帰に大きく羽ばたいている現実を身近に感じ大いに勇気付けられています。
当会も人工孵化による鮭の稚魚放流にだけ頼るのではなく、河川での自然産卵による鮭の遡上を目指し、昨年の平成24年12月16日、北海道の河川以外では初めての試みとなる、バイバードBOXによる鮭の発眼卵埋設放流を上田市の浦野川で、日本海区水産研究所の技術指導を受けながら上田道と川の駅 おとぎの里の石井さん、長野大学環境ツーリズム学部の高橋教授の協力を受けて行いました。
長野県上田市を流れる千曲川の支川・浦野川
バイバードBOX上部の空間に200粒の発眼卵を入れて浦野川に埋設
稚魚放流後の4月中旬バイバードBOXを掘り起こして調査した結果、半数は稚魚となって翌月には日本海へ降下するものでしたが、約3割近いBOX内に泥が入っておりふ化率の悪いものもありました。また河川水温は思っていた以上に低いことも分りました。
ふ化に成功し成長した稚魚と、バイバードBOXに泥が入り死魚となっていたBOX
◎昨年の調査結果、
1、 バイバードBOX 1個に入れる発眼卵数の容量が200粒であった。
(鮭の自然産卵では、約2,000~4,000個の卵を4回ほどに分けて埋設する)
2、 GPSで計測して浦野川に埋めた籠ではあったが出水によって埋まり、一部見つからなかった上埋設した場所を見つけるのに苦労した。
3、 思っていた以上のバイバードBOXに泥が混入しており、生育がしていなかった。
4、 現在のバイバードBOXは外国製の輸入品で、購入単価が1個1,000円と高く、発注単位も500個と当会で購入するにはハードルが高い。
(昨年は日本海区水産研究所よりお借りして調査を行った)
5、 昨年使用したバイバードBOXはイワナ用のBOXで上部スリット幅が3㍉と細く、稚魚となって川に出ようとした稚魚が挟まれて出られないものがあった。
6、 浦野川の河川水温は1月~2月は思っていた以上に低かった。
◆その結果を踏まえて今年はバイバードBOXの改良を行いました。
1、 容器のスリット幅を最低3.5㍉以上の容器を使用する。
2、 安価でどこにでも入手可能なバイバードBOXが必要。
3、 泥の混入がなるべく少ない構造のBOX。
4、 発眼卵を800粒位入れられる容量のバイバードBOX。
5、 2~3年後、長野県の千曲川に鮭を2~3数尾遡上させるには回帰率を0.1%と考えると毎年2~3万尾の稚魚が千曲川を下り無事に日本海に着かなくてはならない。
改良型バイバードBOXの材料と完成品
その為100ショップに通い、いくつかの試作品を作った。最終的には、スリットの幅5㍉の食器水切りカゴとスリットの幅3.5㍉の卓上水切り、米びつ3kg用のふたを使うこととした。合計3点、取り付けは結束バンドを使用した。
ざるの中をくり貫き、水切りカゴを入れて結束バンドで固定した試作品
早速安田さんにも協力していただき、発眼卵を最大800粒まで入れられる容器を13セット作り、BOX内の水温を測定できるロガーを5セット購入して長野県への発眼卵輸送の12月15日を迎えました。
2013年 鮭の発眼卵埋設放流-2 に続く
※この活動は三井物産環境基金の助成を受けて行っています。