2013年 鮭の発眼卵埋設放流-2

◆上田市の浦野川で鮭の発眼卵埋設放流

今年も自然ふ化した稚魚が3~4年後成魚となってより多く遡上してくるように、上田市の千曲川支川の浦野川に、発眼卵の埋設放流を行ってきた。人工ふ化による鮭の稚魚放流も大切であると思うが、より自然産卵に近い状況に近づけたく、発眼卵を入れる容器の改良の他、卵を川底に直接埋める方法にも今年初めて挑戦した。二つは共にふ化率は高く、評価されている。

 

1、容器を使う放流

放流用のバイバードBOXなどの容器を使って発眼卵を箱の中に入れ、産卵床となる河川を掘って窪みを作り、そこに箱を置いて上に砂利をかぶせておく方法です。

長所として、ふ化率は高く、生卵、死卵やふ化率、浮上率などのデータを得ることができる。

短所として、ボックスのコストが高く、川の増水時に流された時にはゴミとなる。また水温の低い河川で長時間の作業がきつく、人手がかかる。

昨年のバイバードBOXの埋設

 昨年のバイバードBOXの埋設

 

2、直まき放流

川底に発眼卵を直接入れる方法で、自然の産卵床が出来るように川底を10センチ以上掘ってくぼみを作り、そこにパイプを突き立て漏斗から発眼卵を川底に入れてからゆっくりとパイプを立てたまま引き抜き、砂利で窪みを埋める方法です。

長所として、コストが安く、作業時間が短くすむ。

短所として、ふ化率などのデータは得られない。

発眼卵直まきのやり方

 パイプに発眼卵を流し込む直まき

 

◆ 能代川サケ・マス増殖組合から鮭発眼卵12万粒を長野へ

12月15日(日)夜明けが始まった午前6時半、積雪10センチの五泉市上大蒲原にある能代川サケ・マス増殖組合の養魚場に到着。吉井組合長や高岡副組合長さんが発眼卵の検卵を終えて待っておられた。長野へ持って行く発眼卵は昨日までの積算温度は335度、1粒平均0.255グラムであると説明をいただき、直ぐに12万粒をスチロール箱4箱に積めていただく。

能代川サケ・マス増殖組合より発眼卵12万粒

サラシを濡らし、約1kgの発眼卵を発泡スチロール箱に入れる

 

能代川サケ・マス増殖組合とのお付き合いは、新潟県農林水産部よりの紹介で4年前から始まった。この増殖組合はまだ漁協としての歴史は浅いが、日本海区水産研究所の指導と組合員皆さんの鮭への熱意もあって、他の河川で採捕数が激減している県内にあっても鮭の遡上数は毎年順調に成績を上げ、平成10年100尾台であった鮭の捕獲は、今年8,000尾を誇るまでとなった。

 

お礼もそこそこに出発した。途中で待ち合わせの山岸さんと長谷川さんを乗せて、関越自動車道に乗り長野県上田に向った。

上信越自動車道の妙高付近では少し積雪もあったが、予定通り午前11時過ぎに上田道と川の駅に到着した。この日は餅つきのイベントがあって子どもたちも多く集まっていた。

上田 道と川の駅 おとぎの里イベント

 道の駅はイベント中であった

 

丁度、日本海区水産研究所の飯田さんも高崎からも来たのでお餅とトン汁をご馳走になってから、駅の裏の浦野川河原に準備のため行く。

今回の浦野川での発眼卵埋設予定数はバイバードBOXで1万粒、直まきで1万粒の合計2万粒である。昨年同様に長野大学の高橋大輔先生にお願いして、河川生態学のゼミ生17名が作業に手伝ってくれた。また、昨年も来てくださった軽井沢の沼田さんも応援に駆けつけてきた。

応援の長野大学の学生さん

 太陽は照っていたが風が冷たい中での作業

 

昨年浦野川に埋設したボックスの中に泥が混入し発眼卵が酸欠のため死卵となったものがあった。これを防ぐため今年は浦野川本流だけに埋設するのではなく、新しく掘っていただいた親水水路にも埋設することにした。

今年のために石井さんが千曲川河川事務所と掛け合い、親水水路の工事を早めてもらい、今回の埋設に間に合った。

発眼卵埋設予定の浦野川と親水水路

川底に砂礫の層を川幅いっぱいに造ってくれた浦野川と親水水路

 

実は8月の台風による水害で浦野川も数百トンの濁流に包まれ水面も3m程上昇し、川の形状が変わってしまった。また川沿いの木に設置しておいた観察ビデオカメラは無事であったが、駅の建物より引いていた電源及び映像のコードとボックスが流された。

台風による洪水で川の形状が変わった浦野川

木の上に取り付けてあった観察ビデオカメラは無事であったがコードはズタズタに

 

上田 道と川の駅の200m程上流には、2010年10月20日65年振りに鮭の発見された山中ヤナ場がある。そしてそのヤナ場に2012年11月3日再び鮭が発見され新聞を賑わした。

65年振りに鮭が発見された中山ヤナ場

 65年振りに鮭の発見された山中ヤナ場

 

だがその洪水でこのヤナ場も破壊的な壊滅状況となっていた。大量の土砂の中にヤナがあるという状況で唖然となった。自然の大きさは人間をはるかに超えた存在であることを実感した。

洪水で壊滅的な被害を受けた山中ヤナ

ヤナ場の木の杭だけが残る

 

◆ 改良型バイバードBOXに発眼卵を入れての埋設

早速、浦野川本川に改良型バイバードBOXを7ヶ所埋める場所を決める。

長野大学の学生さんの中に、昨年お手伝いいただいた方も多く居て要領は分っていて大いに助かった。バイバードBOXを川底の砂礫層に埋めてしまうため、流れに沿って幅50センチ、長さ80センチ、深さ30センチの穴を学生さんに掘っていただく。

埋設場所を決め、ボックスを埋める穴を掘ってもらう

浦野川の横断と縦断に7ヶ所ボックスを埋めるための川底の石を掘る作業

 

その間に発眼卵は直射日光に当たらないようにしながら600粒、800粒、1000粒の3種類に計量、バイバードBOXに発眼卵を入れそして、水温のデータロガーもボックスに固定して結束バンドを掛ける。

発眼卵を計量、温度計を入れ結束

発眼卵を電子秤で計量し温度計を入れてから蓋を閉めて結束する

 

掘った穴の大きさ深さを確認してからバイバードBOXを慎重に川底に入れ、ボックスが見えなくなるまで上に砂利を入れる作業を繰り返したが水は冷たく、天気が悪かったら今日の作業は出来なかったであろうと考え、本日の天気に感謝する。

ボックスを埋設、上に砂利を入れる

 穴を掘った処にボックスを入れて砂利を上にかぶせる

 

埋設が終わるとその場所に棒を立て、岸に打ち込んだ二つの基点からの距離を測定した。これは昨年埋設した場所をGPSで計測し後日掘り起こそうとしたが、GPSの誤差が2~3mあり、容易にボックスが見つからなかったため、今年は場所の測定方法を改め30mの大型巻尺を使用した。

埋設した場所を測定する

 巻尺で距離を測定するゼミ生と数値を記入の山岸さん

 

鮭の発眼卵埋設放流-3に続く

 

※この活動は三井物産環境基金の助成を受けて行っています。

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