鮭の発眼卵の河床埋設放流を行いました。

私達新潟水辺の会では、鮭が遡る信濃川・千曲川の復活を目指して、稚魚の市民環境放流や発眼卵の河床埋設放流、長野県の皆さんとの交流・連携などに取り組んでいます。
その取組の一環として、2015年12月20日(日)新潟県長岡市内を流れる湯の谷川で鮭の発眼卵の河床埋設を行いました。会員以外の方も含め総勢12人が作業に参加しました。

 

発眼卵の河床埋設は、日本海から信濃川を遡上した鮭が自然産卵できるまでの間、人が産卵の代替行為を行って鮭のお手伝いをするというものです。

 

湯の谷川は信濃川の4次支川(信濃川→支川の黒川→さらに支川の河久保川→さらに支川の蛇喰川→そのまた支川の湯の谷川)となります。地図は下記をご覧ください。

 

当日は当会の加藤副代表の車に乗せていただき、能代川サケ・マス増殖組合様のふ化場にお邪魔して、埋設する発眼卵2万粒を分けていただきました。

 

能代川サケ・マス増殖組合様では、12~13℃の水温変化の少ない地下水伏流水を汲み上げて鮭のふ化を行っています。

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木の蓋をとると中に受精卵がたくさん飼育されています。

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発眼卵の検卵、ふ化が終わると、こちらの砂利をしいた浮上槽で飼育するとのことです。

 

鮭の卵は受精してから積算温度が240℃になると卵に眼ができた発眼卵の状態となり、480℃になると孵化が始まります。(積算温度=水温×日数 例えば水温10℃で一定なら48日でふ化することになります)

 

今回分けていただいた発眼卵は11月23日に採卵・受精したもので、積算温度は368℃、1粒の重さは約0.24gになります。発眼卵は私達がよく目にするイクラよりも皮が固く白っぽくなっている感じがします。

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積算温度ではあと110~120℃でふ化することになります。この日の湯の谷川の水温は8~9℃だったので、お正月のころにふ化するのではないかと予想されます。

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能代川サケ・マス増殖組合の皆様(左側の3人)と加藤副代表(右端)とで記念撮影。

組合の皆様朝早くからありがとうございました。

現地に向かう途中、11月7日に信州上田の方々と一緒に見学した加茂川を覗いてみました。

 

サケの漁期は終わっているとのことですが、まだ川を遡上してくる鮭が橋の上から見えます。

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現地に到着し、加藤副代表の案内のもと手分けをして発眼卵の埋設を行います。

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長靴に水が入らないように工夫をしてみましたが、長時間はもちませんでした。(短時間の作業ならこの方法もおすすめです)
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現地では加藤副代表の案内で発眼卵を川底に埋設していきます。(下の図は作業手順のイメージです)

発眼卵の河床埋設方法[2]

最初に川底に発眼卵を埋めるための穴を掘ります。

 

次に卵を入れる空間を確保するため、割り箸を格子状に組んだ蓋をかぶせます。この蓋は作業性を良くするため、加藤副代表の発案・手作りのものです。

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格子のすき間にパイプを差し込んで、蓋の上に砂利をかぶせた後、パイプの先にろうとをあてて、発眼卵を穴の中に流し込みます。

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今まではパイプを引き抜くときに卵が流れでてしまうという問題があり、卵を入れた後、さらに小粒の石を流し込んでパイプを引き抜くときに卵が流れ出ないようにするのも今回のもう一つの工夫点です。

 

メス鮭は平均で3000粒の卵を3~4箇所に分けて産卵すると言われているので、今回1箇所あたりに埋設する卵の数は約600粒としました。重さを換算して約140gの発眼卵を計量します。

 

こうして川沿いに移動しながら約30箇所で発眼卵の埋設を行いました。

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また、実際に発眼卵がどの程度ふ化して、稚魚が川を下って行くのかを追跡調査するため、手作りのバイパードボックスに発眼卵を入れたものも2箇所ほど埋設しました。(こちらの方は容量が大きいので800粒を入れました)

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発眼卵は少し位の衝撃にはビクともしませんが直射日光などの紫外線には弱と言われていますので、水の酸素を取り込みながらかつ日光が当らないよう、砂利層の川底にしっかりと埋め込みました。

 

バイバードボックスの中には日々の水温を2時間ごと継続的に記録するための計器をセットしました。3月下旬頃バイバードボックスを回収し、発眼卵の生育状況を追跡する予定です。また、川の表面水温も1時間ごと記録する計器を近くの木に縛り付けました。

 

初めのうちは作業のペースが上がらなかったり、パイプを抜くときに卵が流れ出たりもしましたが、慣れてコツを掴んでくると卵も流れ出なくなりペースもびっくりするほど上がってきました。

 

川の中に入って作業する人も大変でしたが、それにあわせて発眼卵を計量したり道具や材料を運搬していくのもなかなかの作業で、役割分担をうまくやらないと大変だと感じましたした。

 

この湯の谷川は他の川の水温より1℃ほど高い川のようです。現在の水量と水温から推定すると、埋設した発眼卵は3月下旬までには1g位までに成長し、川を下り日本海に向かうことになると考えられます。

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最後はみんなでお互いの労を労いつつ、埋設放流した発眼卵が4年後戻ってきて自然産卵するようになることを願いながらの記念撮影でした。

 

当日の現地は少し雪が積もっていましたが、快晴で気持よく作業ができました。ご参加いただきました皆様お疲れ様でした。ありがとうございました。

 

今回の作業で今年度の鮭の復活に関する活動はほぼ終りとなります。これまでのように3月頃に鮭稚魚の市民環境放流を行えればよいのですが、レッドマウス病の問題もあるため今年度は市民環境放流は行わないこととしました。

 

しかし、活動はこれで終わりではなくレッドマス病の問題の様子を見ながら、継続的に取組んでいきたいと考えています。

 

(この記事は副代表 加藤 功・世話人 杉山 泰彦の共同執筆です)

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