天童の水便り―12

山形県・天童市で農業を営む会員の須藤敏彦さんから「天童の水便り」が届きました。

 

斉藤 茂吉 の最上川について

斉藤茂吉(1882―1953)は現在の上山市に生まれ、東京の青山病院の院長で、戦時中生家金瓶に来て、昭和21年に大石田に移り住みました。

歌集「白き山」は晩年の作で大石田近辺で、歌ったものです。約800首がおさめられており、茂吉の代表作と言われています。

実は、私は歌集を読むのは初めてで、今まで最上川についての歌は下記のものしか知りませんでした。

◯最上川逆白波のたつまでに ふぶくゆうべになりにけるかも(茂吉)

◯広き野を流れゆけども最上川 海にいるまでにごらざりけり(県民の歌)

◯五月雨を 集めて早し 最上川(芭蕉)

◯最上川舟唄(民謡)

ヨイサノマカッショ エンヤコラマカセ
エーエンヤーエーエンヤエーエー エーエンヤエード
ヨイサノマカッショ エンヤコラマーカセ
酒田サユグサケ マメデロチャ ヨイトコラサノセ
ハヤリカゼナド ヒカネヨニ
エーエンヤーエーエンヤエーエー エーエンヤーエード
ヨイサノマカッショ エンヤコラマーカセ(大江町付近)

 

今回、歌集「白き山」を読み、この中から最上川を歌ったものを中心に紹介 したいと思います。私の理系的感覚とは違い、文化的観点から、最上川(ほぼ 山形県内の風土)を表現していると思います。

2016.3.5撮影 最上川谷地(大石田より上流)

2016.3.5撮影 最上川谷地(大石田より上流)2016.3.5撮影

 

昭和21年作

山形県の上山から大石田に転居した時に歌ったものです。

1 最上川の支流の音はひびきつつ 心は寒し冬のゆふぐれ

「紅のもや」より

2 きさらぎの日いつ“るときに 紅色の靄こそ うごけ最上川より

3 川もやは 黄にかがやきぬ 朝日子の のぼるがまにまわが立ち見れば

4 最上川の川上の方にたちわたる 狭霧のうつ“も常ならなくに

5 最上川の川の面よりたちのぼる うすくれなゐのさ霧のうづは

6 春たつとおもほゆかも 西日さす 最上川の水か青になりて

7 われひとり歩きてくれば 雪しろきデルタのうへに月照りにけり

「ふくろふ」より

8 最上川みづ寒けれや岸べなる 浅淀にして鮠の子も見ず

「大石田漫吟」より

9 最上川ひろしとおもふ淀の上に 鴨ぞうかべるあひつらなめて 3月1日

10 かがなべてひたぶる雪のつもりたるデルタとわれと相むかひけれ3月4日

11 洞窟となりて雪なきところあり そこよりいつ“る水をよろこぶ

病床にて

12 最上川 みかさ増りていきほふを 一目を見むとおもひて臥しゐる

最上川 大石田 2016.3.5撮影

最上川 大石田 2016.3.5撮影

「けしの花」より

13 われひとりおし載きて 最上川の鮎をこそ食わめ病癒ゆがに

最上川 大石田 2016.3.5撮影

最上川 大石田 2016.3.5撮影

「夕波の音」より

14 わが病やうやく癒えて歩みこし 最上川の夕浪のおと

15 鉛いろになりしゆふべの最上川こころ静かに見ゆるものかも

16 彼岸に何をもとむるよひ闇の 最上川のうへのひとつ蛍は

17 ながらへてあれば涙のいつ“るまで 最上の川の春ををしまむ

「黒滝向川寺」より

18 最上川の岸にしげれる高葦の 穂にいづるころ舟わたり来ぬ

19 向川寺一夜の雨に音たてて ながれけむ砂しろくなりにけり

20 黒滝の山にのぼりて見はるかす 最上川の行方こほしくもあるか

21 ひがしよりながれて大き最上川 見おろしをれば時は逝くはや

22 東南のくもりをおくるまたたくま 最上川のうへに朝虹たてり

23 最上川の上空にして残れるは いまだうつくしき虹の断片

24 最上川にそそぐ支流の石原に こはろぎが鳴くころとなりつも

25 天雲の上より来るかたちにて 最上川のみづあふれみなぎる

26 わが歩む最上川べにかたまりて 胡麻の花咲き夏ふけむとす

最上川 黒滝 2016.3.5撮影

最上川 黒滝 2016.3.5撮影

「秋来る」より

27 わが来つる最上の川の川原にて 鴉羽ばたくおとぞきこゆる

「最上川下河原」より

28 つばくらめいまだ最上川にひるがへり 遊ぶを見れば物な思ひそ

29 最上川に手を浸せば魚の子が寄りくるかなや てに触るるまで

「対岸」より

30 最上川のなぎさに居れば対岸の 虫の声きこゆかなしきまで

 

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