天童の水便り-5  須藤 敏彦

近くの水辺の課題

自宅近辺は川に水が少なく、そのため水田が少なく、畑(主に果樹)中心の農業です。果樹は、サクランボ、モモ、りんご、ラ・フランス(西洋なし)など、水田は、はえぬき、つや姫(両品種は県で開発、現在は、つや姫をPR中)などです。

  (我が家の9月から11月生産のりんごと、稲ぐいによる自然乾燥)

我が家の水稲は、約80アール。全て稲ぐいによる自然乾燥です。コンバインを使用すれば、刈り取り、脱穀、わら処理(カッター、カッターせず水田面にわらを置く)が同時に出来、乾燥機にかけ、もみすりをすれば約一週間程度で玄米になります。

自然乾燥は、乾燥のみで約1ヶ月を要します。 わらは、全量近くの酪農家に譲り、酪農家は、エサや敷きわらにします。特にエサ用わらは、出来るだけ水田面に接する時間が短い事が求められます。この点自然乾燥わらは、脱穀しながらわらを集めるため、わらが、水田面に接する時間が非常に短いのです。放射性物質の問題が明らかになり、エサ用わらの需要に寄与しているという事になります。

さて、少ない水田も担い手不足で他人に貸したり作業委託したり、さらに、耕作放棄をしてしまうのが現状です。2,3年水田を放棄してしまうと雑草の天下になり、ニセアカシヤが大きくなればもはや廃川敷みたいになってしまい、復田は不可能になります。

果樹も同じで耕作放棄地は、病気、害虫の住みかとなり、近くの果樹園は通常より多くの防除を行うという事になります。農業の6次産業化の推進が指導され、実践されている農家も少なくないこの頃少ない人間で、水を守っていかねばならぬ時代なのです。

  (12.3.31乱川定点)             (12.6.6乱川定点)

左の写真は12年3月31日、右の写真は12年6月6日、の乱川定点(乱川と国道48号線が交差する、本郷橋から上流を見た地点)です。

3月は融雪があり、農業用水の取水がないので流水はやや多めです。6月は降雨なく、農業用水の取水があり、流水はグンと少な目です。

この乱川定点の上下流には四つの農業用水堰があり、乱川扇状地の伏流が伴い、山形新幹線と交差する万代橋付近では、ほとんど流水がなくなってしまいます。

したがって、扇状地先端部の湧水を確保し、そこに住む貴重なイバラトミヨを保存するには、上流で、奪い合って取水している各農業用水堰が、必要以上の取水を行わず、お互いの用水堰どうしが、現在以上の協調性を発揮すれば、湧水、流水の増加が期待されます。

横内堰と和田堰の分水水門       天童堰と高揃堰の等分分水工

果樹園も水がないから果樹だったのが、今は加温サクランボが、5月頭から生産されています。これは、畑地灌漑(当地では、白水川ダムより取水)のおかげです。また、霜の害を防いだり、高温障害の防止、もちろん降雨不足の解消はもっとも大事なことです。

「川を守る」には私たち人間の生産活動があって、はじめて実現されるものと思います。つまり、生産活動している私たちの向上するベクトルが必要です。あまりにもローカルな話でしたが私は60近くになり、息子も26才。ジェネレーションの交代時期に入りました。

天童の水便りは、1~5で終了です。 お読みいただきありがとうございました。

One comment

  • 須藤さん、トゲソの会中村と申します。
    天童のイバラトミヨの情報など「水便り」読ましてもらいました。一度、山形のイバラトミヨを見に行きたいと思いつつ、行けないでいます。

    五泉のイバラトミヨ(俗称トゲソ)は、私達の管理する水路で大激減しています。原因ははっきり分かりません。コカナダモやザリガニが大繁殖、ミクリを水鳥が食べたのでないか、など推測されています。
    機会がありましたら山形のイバラトミヨの取りまく状況を教えてください。今回で「水便り」終了とのことですが、ご苦労さまでした。
    水清き里に豊かな農業が根付いていることを読ませていただきました。

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