松江の堀川遊覧船
「松江の遊覧船は乗った方が良いよ。」「松江の船は是非、見ておくべきだ。」という話をかねてより聞いていたので、今回、長崎へ向かう途中に『堀川遊覧船』を体験して来ました。
島根県松江市は宍道湖畔に位置する都市で、慶長年間に松江城が建設されるなど日本海側の交通の要衝として発展してきました。
そのシンボルと言えば、全国でも数少ない現存天守を有する松江城です。
現存天守では五番目の古さだそうで、四層五階で黒壁の素敵な姿です。
堀川遊覧船は、その松江城のお堀を利用した一周およそ50分の舟旅です。
お城入り口の駐車場脇にある「大手前広場乗船場」から15分おきに
定員13名/全長8mの動力船が出航します。
一人1230円。切符売り場で乗船券を買って待つ事しばし。
一人ひとりの名前が呼ばれ、乗船していきます。
靴を脱いでの乗船です。
運行は不定期運休はあるものの基本的に年中無休。
冬場はこたつ舟になるとのことでした。
松江城の石垣は、大手門側の石は積まれているものの
北側や西側は土塁のままで、伸びきった樹木が堀側に大きくせり出しています。
一説には、松江藩の財政が石垣整備にまで追いつかなかったとの事らしいのですが、
しかし、これが浦安にある某テーマパークのアトラクションのような雰囲気を醸し出し、お客さんも「まるでジャングルクルーズみたい。」と言っていました。
確かに、明治維新後、用の無くなった城郭跡地の樹木が成長し、
石垣の孕み出しなど悪さをしている様ですが、ここ松江の土塁に生える樹木は
訪れる人達に、ほんの少しの探検気分を与えてくれるのかも知れません。
堀川遊覧船の名物と言えば、桁の低い橋をくぐる時に
舟の屋根が下がってくる事です!
さしずめ川船のリンボーダンスの様な趣きです。
写真の様にお客さんは橋をくぐる間、屋根が下がるのと同時に、頭を下げなければいけません。
周遊の間、計4回この動作を要求されます。
船頭さん曰く「この橋くぐりは意外と好評なんですよ。」とのこと。
確かに風景だけを眺めてぼんやり50分を過ごすのと、
時折、こうした「お客さんへの要求」があるものとでは
少し違うのではないでしょうか。
おそらく、こうしたアトラクション的な要素が人気の一部なのかも知れないと感じました。
途中、「ふれあい広場」と「カラコロ広場」の二ヶ所の船着場に寄ります。
ここから乗るのも降りるのも自由との事です。
写真は、遊覧船の事務所が有るふれあい広場のものです。
現在、船頭さんの話では舟が45艘、船頭はおよそ70名(内女性10名ほど)で、中には地方から来ている方も居るとの事。
(できれば女性の船頭さんの舟に乗りたかったです。)
ちなみに(カラコロ広場)というネーミングは、
この乗り場のすぐ脇の橋を下駄を履いた人が渡る音を
小泉八雲が書き記したことによるものだそうです。
お堀の南側、現在では商店街や民家が立ち並ぶ所では
時折、川へ降りるための石段が残っていました。
かつては、ここで食器を洗ったりしていたそうですが
そのほとんどが、降り口をコンクリートで固めたり
石段が崩れたままでした。
これも人と川との繋がりが途絶えた残物の様な印象を感じました。
かつて基本的に道路に面した方が「表」で、川に面した方が「裏」という考えだったのかも知れません。
「裏側をみせるなんて」ということなのでしょうか。
平成の時代になり、その意識は変えなければいけないとも感じました。
一方で、70名いる船頭さんの内、植栽を担当する方が
季節の植物を川沿いに植えているとの事でした。
写真は、あじさいですが、開花時期をずらして様々な植物を植え
訪れる方を喜ばせたいという心配りは見習うものだと感じました。
さて、船頭さんは住宅密集地以外はマイクで解説してくれます。
そして橋をくぐる度に歌を披露してくれます。
「松江舟歌」(曲名の記憶が定かではありません。長山洋子の歌ではない。)
「かいがら節」の二曲を歌っていただきました。
橋の下では反響音のためマイクを通した歌に自然のエコーがかかります。歌い出すのも、橋をくぐる所からで、さすがの演出です。
かつての船旅には舟歌がつきものだったのでしょうか?
横山世話人が、「新潟にも舟歌を!」と述べた経緯が理解できた気がします。
周遊の終わり、船は発着場へと戻ります。
船頭さん曰く「ここが写真のベストポジション」だそうです。
城、お堀、橋、川船、この取り合わせが
堀川遊覧船のハイライトではないかと感じました。
下船後は、松江城/小泉八雲記念館を散策し、出雲蕎を堪能。
およそ2時間半の行程でした。
松江城、堀川遊覧船、小泉八雲の「松江観光三役揃踏」です。
こうした歴史的背景を受けた川舟遊覧の魅力を
どのように取り入れられるのかが
新潟だけでなく、全国の課題なのかなと感じました。
さて今回、初めて堀川遊覧船を経験して感じた事は
「単純に人は舟に乗る事を期待しているのかな?
その舞台装置が城郭や歴史的風景/関連施設であれば対価を惜しまない。」
ということなのだと感じた1日でした。
(2014年10月10日 長谷川 記)
堀川遊覧船に関しては、横山世話人が2012年に
船頭さんから直接お聞きした記事を載せているので
そちらも参考にして下さい。
http://niigata-mizubenokai.org/2012/0717100045.html
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