2日目-1宇奈月温泉~黒部峡谷トロッコ電車~欅平 事務局 加藤 功

2日目の21日、午前5時いつものように目が覚めた。雨が降っていたが傘を指して、宇奈月温泉街を1時間半ほど散歩した。

20数年前、会社の慰安旅行でここへ来たことがあった。当時の慰安旅行で思い出すのはバスで移動しての団体行動と飲むことだけで、途中の観光地の歴史など覚えていない。午後宇奈月に来て黒部峡谷のトロッコ電車に乗って欅平へ行き、少しぶらついて宇奈月まで同じトロッコ電車に乗って駅まで戻り、宿に入って宴会となりどこへも出なかった。翌朝も前日の宴会の飲み疲れでそのままバスに乗り、新潟に戻ったようだった。

河川維持放流 8m3/sの流れる黒部川と宇奈月温泉

 温泉街のホテルはその頃の建物が多く、かつての団体旅行から家族での旅の変化に追いついていない感があり、倒産したと思われるホテルが数軒見受けられた。昨日宿の宇奈月グランドホテルに入る時、ホテルの看板が見つからず通り過ぎて戻った際、宿の看板が反対方向から来る時だけ見えるようにあった。

不思議と思ったが朝の散歩で分かったことは、昨日来た右岸の道は以前のメインロードではなく、左岸の道より駅前を左折して来るのがメインであった。だが車社会の現代、どちらから来ても宿の看板が見えるようにしなくては時代に乗り遅れるだろう。だが、6時前なのに多くの作業服姿の方が、民宿の宿より駅や現場に向かって雨の中を歩いて行く。あー、今日は平日の金曜日であったことを思い出した。

 

今年の水辺ツアー最大の見ものは、一般には開放されていない未開放黒部ルート(欅平~黒四ダム)を、関西電力のご好意で丁寧に案内していただくことができた。 

皆さんこれまで宇奈月温泉への旅行で黒部峡谷鉄道のトロッコ電車に乗った方が多いとは思うが、このトロッコ電車は欅平で行き止まりとなり、同じルートを帰ってくるものであった。この未開放黒部ルートは関西電力の専用設備で、関西電力が黒部で運営している発電施設のため地図に載っていない資機材運搬ルートで一般乗客には原則非公開の場所である。

 

私たちが通った黒部未開放ルート(欅平~黒部川第四地下発電所~黒部ダム)

 このルートは平成8年に始まった黒部ルート公募見学会(年に30数回行われ、1回30名募集で抽選、競争率7倍の時もあるという。小学校5年生以上で、乗り物の乗降や階段の歩行に支障のない方で、登山を目的とした参加はお断り)とは別枠の「社客の発電施設見学会」で、関西電力北陸支社の加藤雅広主任と、8月の「新潟のみずつちの原点を探る、信濃川を訪ねる旅」とワークショップ(新潟市の水と土の芸術祭2012の一環で、当会主催)に参加してくださった中濱祐一さんのお二人が同行して案内してくださった。

 

8時、関西電力黒部川電気記念館で私たち20名は、今回のルートについて説明を受けた。今回このルートを行くのは私たち20名のみであり、それに黒部川電気記念館から案内役の2名と、加藤さん、中濱さんの24名のみであることを知った。電気記念館前で記念撮影を行い8時37分発作業員輸送用のトロッコ電車に乗って欅平に向かった。

 電気記念館前で記念撮影(20名参加なのに、なぜか19名しかいない?)

標高224mの宇奈月駅をトロッコ電車は発車し、標高1,454mにある黒部ダムへと向かう。途中の駅では数名づつ関西電力の方が降りてゆく。数年前の大雨で河床が高くなり大型の重機がこの山奥で活躍しているが、これらは全て道が無いため分解してこのトロッコ電車及びヘリに載せ、そして現地で組み立てて使用しているとの事であった。また同じ車両に乗って現場に向かう作業員のリックには、熊避けの鈴が付いている。ここではそれが必要なのだ。

途中案内の元野主任さんが言っていたが、トロッコ電車は往復では結構運賃は高く(大人3,320円)、かつ欅平まで行ってもその先に行ける訳でないため、近頃は途中で下車してその時間をゆっくりすごす方が多いとの事である。私たちのようにそのまま黒部ダムまで行ける人は年に2,000人程度とのことである。今後この区間が一般に開放され黒部ダムまで行けるようになると、長野及び立山からの観光客が増え黒部観光の飛躍につながるのだろうが、そう簡単にルートが開放にはならないだろう。それはこのルートを通ってようやく理解できた。

 

◆黒部川 ダム排砂問題

ダムにとって流れ込む土砂の問題は深刻である。黒部川には黒部ダムを始め、小屋平ダム、仙人谷ダム、そして本格的に排砂ゲートを装備した出し平ダム、同じく装備した宇奈月ダムが黒部川本川にある。黒部川は日本でも急峻なV字地形から土砂が流れ易くダムに溜まってしまう。1936年完成の小屋平ダムや、1940年完成の仙人谷ダムのダム湖の堆積率は91%近く、ダム湖の水面すれすれまで土砂で埋まっており、取水口付近の少量の貯水容量を確保しながら発電用の取水を行なっているのが現状とのことであった。

 

 ほぼダム湖が埋まった左の小屋平ダム、右の仙人谷ダム

それとは対照的に小屋平ダムの下流には、ダム湖の底に溜まった土砂を、降雨量が一定以上となった出水時に、水の力を利用してダム下部に設置したゲートを開けて下流に流す排砂ゲートを装備した、出し平ダム、宇奈月ダムがある。

平成3年に宇奈月ダムの排砂ゲートが開れたが、完成から六年間放置されたため、湖底にたまった落ち葉などが変質し、黒くヘドロ化した土砂が黒部川や富山湾に流れ込んで下流の漁業に深刻な影響を与えた。河口近くの漁協関係者が関西電力を相手取り、排砂の中止と損害賠償を起こしたが、平成23年4月和解が成立した。

当時の北日本新聞に、当会の大熊代表の「排砂は以前のダム技術に比べ進んでおり期待できる試みだが、まだ試行錯誤の段階」とのコメントが載っている。

 

今回の水辺ツアーのひとつにダム見学がある。昨日宿に入る前に宇奈月ダムを見学してきた。国土交通省直轄で、平成13年完成した多目的ダムである。昨日は黒部川の環境に配慮し8m3/sを下流に放流していた。

そんなことを思い出しているうちにトロッコ電車は標高599m欅平駅に入って行った。宇奈月温泉から欅平まで約20kmで標高差375mを約50分で登ったことになる。だがこれより垂直に200昇るエレベーターが待っていた。

2日目の2へ続く。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください