待望の鮭が、西大滝ダム魚道に連日遡上しています-1

信濃川は、長野県から新潟県を流れ、日本海へ注ぎ、長さ367km、年間流量約160億m3、流域面積11,900km2を有する、日本を代表する大河である。平安時代から信濃川・千曲川は全国屈指の鮭の産地として知られ、江戸時代には長野市内の千曲川、犀川で年間数万尾の鮭が遡上していた。信濃川の源流の川上村や上高地付近まで鮭の遡上が記録されている。

昭和10年代に始まった国策の電源開発事業によってダムや発電所が作られと、信濃川・千曲川は一変した。中でも、信濃川中流域の、東京電力西大滝ダムから下流のJR宮中取水ダムを経て小千谷発電所に至る約63kmという極めて長い減水区間が現れ、鮭などの魚類の遡上・降下経路が断たれ、千曲川と新潟県十日町近辺の鮭漁は昭和15年を以って終焉した。

信濃川中流域水環境 改善検討協議会HPよりの地図

水力発電の取水で川の循環機能が低下したため、多くの水生生物がすみ場を失い、川の生態系は極度に劣化し、鮭どころかウグイの往来にも事欠く細流となった。流域の人々も、漁を通じた川からの恵みも得られなくなり、人と川との関わりが希薄になってしまった。このような犠牲の上にJR宮中ダムで取水、信濃川発電所で発電された電気は、首都圏の電車運行に必要な電力の23%を供給しているが、受益者たる首都圏の住民にこの事実はほとんど知られていない。

長野県でも昭和55年より「カムバックサーモンキャンペーン」を開始。千曲川に鮭を遡上させるために21年間で899万尾の鮭の稚魚放流を実施したが48尾の遡上結果であった。

平成20年JR東日本の不正取水問題が発覚。翌年3月JR東日本の取水権取消し処分となり、かつての大河・信濃川が甦った。平成22年6月9日、5年間の試験放流の許可により発電は再開され宮中取水ダム魚道で、21年160尾、22年146尾の鮭の遡上が確認された。また上流の西大滝ダム魚道でも、平成21年2尾、22年度3尾の鮭が確認された。そして22年10月20日には、信濃川河口より253kmの上田市の千曲川に産卵後のメス鮭が65年ぶりに発見された。

上田市の千曲川・簗場にて、上小漁業協同組合撮影

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第2回「信濃川・環境大河塾」ツアー その2

その1はこちらです。

○水内ダム。昨年はダム下流のたまりに、数尾の巨大な(60~80cm)鯉の魚影が見えた。高水温でも生きるホットコイに感心したが今年は大雨での放流で、写真比較でもその差は歴然だった。ダム上流の町は街なかの道路が水没したことがあるという。左岸に屋形船と乗り場があった。

 

○平ダム。半地下の発電所のあるダム。いつもは数キロ先に放流するので流れはない。

○生坂ダム。ここで上流からのゴミをシャッターアウトするので相変わらずゴミが多い。

昭和電工のダムから1.3t/sの維持流量が流れてくるのでその分は取水発電に使えないのでダムに穴を開けて下流に放流している。今回は大雨で水門も開いていたため川幅一杯に流れがある。

ここで上流から来た維持流量に配慮した1.3t/sが、維持流量として次のダムでも配慮され次々とダムを通り小田切ダムまで流れるものだと素人の我々は思うのだが、次のダムでは配慮しなくてもいいという、納得しにくいルールがあると聞く。ワークショップではこの1.3t/sが話題となった。

 

○聖山パノラマホテル(1200m標高)のスキーロッジ風のホテル泊。加藤スーパー事務局長が事前段取りの道中でたまたま見つけたホテル(といっても川沿いから30分登る山頂にある)でアルプスが一望の星がきれいな場所とのこと。当日は雨模様でガスの中でした。

翌日はホテルの大広間での大河ワークショップ。東京電力㈱の方4名の『長野県内の水力発電の概要』の説明。東電の方々に感謝です。

大熊先生のミニ講義、「川やダムへの価値転換」で始まる。(テーブルの上には、東京から参加のIさんの気遣いで、シシウド、ツリフネソウ、キバナツリフネソウなどの野草の花が飾られている)

 

大熊先生から、「川やダムへの価値転換」のキーワードとして、

1. 近代技術の限界の再認識、・・・原発の使用済み燃料、ダム堆砂、自動車への過度な依存の都市計画など近代技術の限界は認識されてきたが、慣性力が強くて転換できないできた。

2. 3・11は転換点・・・自然再生エネルギーへの傾斜、だけど水力発電は川に少し水を返して!

3. 自然との共生 -良寛の思想に学ぶー・・・国民総幸福量(GNH)の再認識。ブータンでのGNHチェック項目は、1心理的幸福、2健康、3教育、4文化、5環境、6コミュニティ、7良い統治、8生活水準、9自分の時間の使い方

●ここからワークショップが始まる。グループ討議は、5つのチームに分かれて実施。山岸、小宮山(国際情報大准教授)、相楽、風間、和田の5名でおこなった。

1:あなたにとっての川とは? /思い出・記憶。2:見学したダムの感想 /現地評価と問題・課題。3:大震災後のダム川の将来を考える /犀川を重点の視点から提案

 

 

   

今回のツアーを、小宮山国際情報大准教授から「2杯目のビールは1杯目ほどうまくないが、大河塾は2回目がもっとすごかった」という小宮山流のビール的評価があった。

参加者の年齢(大学生から80数歳のIさんまで)から、学生、元市長、市会議員、新聞社論説委員、行政、電力会社の現役、OB、市民運動家、企業の元CSR担当者、ミュージシャン、研究者など多彩だった。

第2回大河塾は、大震災後であること、脱原発などエネルギーが大きな話題になっている中で水力ダム発電という現実も見ながらひとり一人がどう考えるか、緊張感のあるワークショップになった。

結果として、①維持流量と②魚道のあり方が、全体ワークショップでの最終的な議論になった。

行政の決めた維持流量に対して、市民が提案した流量を、河川管理者と協議しながら検討し、川に流す流量を決めていく『納得流量』が話題になった。第3回が楽しみである。

※この大河塾は、三井環境基金の助成支援で参加者の負担が低くなっている。第3回からは全額自腹での参加になるが、その魅力のある塾としていくことが課題となっている。当事者の参加と受益者の消費者、川沿いの人々の参加での有意義な大河塾としていくことが期待されている。

文責相楽(副代表)

 

 

第2回「信濃川・環境大河塾」ツアー その1

8.23(火)~24(水)昨年につづき、河川環境を考えるダム見学ツアーを実施しました。長野県から新潟県を流れ日本海へ注ぐ、長さ367km、流域面積11,900k㎡、年間流量約160億㎥を有する、日本を代表する大河・信濃川。

その復活を願う『鮭稚魚の市民環境放流』、『鮭の大河シンポジウム』の活動(三井物産環境基金の助成を受けて実施中)の一環での『大河塾』。ダムを見学、日本の大河の現状を自らの目と身体で実感してもらい、魚が棲み、水生植物が茂り、人との関係性の深い、本来の「川らしい川とは何なのか」を考えるツアーです。

定番の塾となるかは分かりませんが、①東京電力㈱(以下東電と略)西大滝ダム・JR東日本㈱(以下JR東日本と略)の宮中取水ダムによる減水区間視察~②東電小田切ダム-生坂ダムの無水区間視察~③川沿いの聖山パノラマホテルで1泊~④視察を受けてホテルで大河塾ワークショップ~⑤毎回現場で、東京電力㈱とJR東日本㈱から担当者が解説していただくプログラムで実施しています。

【当会の誇る、加藤スーパー事務局長による事前の段取りは、エコツーリズム旅行業者になれるレベルのスゴ腕の設定でした。参加者一同、感謝してます】

昨年の減水無水区間の信濃川、犀川を見た参加者も数名入れて、総参加者40名の川旅でした。新潟・長岡・十日町・長野・東京・仙台・富山と広範囲からの参加です。

水辺の会会員のほか、学生・院生、主婦、市議、元市長、技術者、電力会社現役やOB、マスコミ、NPO、研究者、学者、行政など老若男女で、小さなコミュニティのような団体でのツアー塾でした。

車中、大熊代表のきめ細かなガイド(教授職の持分か「マイクを持つとなかなか話さずに喋ってしまうんですね」:ご本人談(^o^;)を聞きながら長野や東京、十日町市などからのグループと合流しJR東日本の宮中取水ダムへ向かう。

○ 宮中取水ダムでのJR東日本の現場担当者から4グループに分かれてのダムやダム魚道のご解説をお聞きしました。JRの皆さん雨の中、ありがとうございました。

新しい表示板が約221t/秒の放流量を示していました。

 

 

 

 

 

写真は、小雨が降っていた宮中取水ダム、放流量を示すデジタル計測計、JR東日本の担当者14名の説明、宮中取水ダムの魚道です。

○東電信濃川発電所の視察 少し急ぎ足で所内を見学させていただきました。発電水車がグリーンなのは地元からの要望だそうです。

建物の歴史があるので『文化財登録が可能だろうけど申請しませんか』と大熊代表から。他にも沢山の発電所などの古い建物があるので期待したいものです。

○東電の西大滝ダムで、東電職員の方々から解説を伺う。パネルもご準備頂き感謝です。

   

西大滝ダムの魚道を見学の参加者。6水門のゲートが全て開いて放流していました。

3.12長野北部地震の被害地の集落で昼食。現地での解説は災害地のまちづくりを指導する京都精華大学の松尾先生。橋が危険なので徒歩で集落へ向かう。1mほど橋の袂で地盤が下がっていた。

 

○犀川にある小田切ダムは雨で増水したせいか、大放流中でした。ほぼ真正面にあるレストラン駐車場から見ると放流による水しぶきが飛んでくる。

○笹平ダム。下流の左岸にダム放流水路があり、桜並木の堤防をはさんだ右岸の河川は普段は無水区間だ。いつもは無水区間だから心眼で見て欲しい、と加藤事務局長から。といっても初めて来た人にパネル写真で比較をしてもらう。

 

○水内ダム放流先発電所

吊り橋を2つ渡るとダム放流先の発電所が見える。どうも、仮締切りするために川の右岸に迂回水路を掘ったので吊り橋が2本になったらしい。この場所で初めて今回ガイド用に購入したベルトスピーカー付きのヘッドマイクでの大熊代表の解説(両手でパネルなど表現できる)が活かされた。

この放流先の発電所には普段は放流水が見えない。さらに数m下に落して発電し、地下水路を通してさらに下流で河川に戻している。その時代は一滴でも水力エネルギーにという思想が働いていたのだろうと。

 

その2へ続きます。

 

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