天童の水便り―11

山形県・天童市で農業を営む会員の須藤敏彦さんから、イバラトミヨの便りが届きました。

 

天童市高木の県指定天然記念物のイバラトミヨについて

 

しばらく振りの報告となりました。

山形新聞によると、天童市の北の東根市大富に生息しているイバラトミヨの生息数が1匹となり、危機的状態とのことです。それに対し、天童市高木に生息しているイバラトミヨ特殊型(雄物型)の生息数は安定しています。

 

平成25年2月発行の、「未来に継ぐ 水清きイバラトミヨの里」高木イバラトミヨ保存会設立10周年誌には、指定区間で約2000匹の生息が確認されています。高木地区のイバラトミヨの生息数が多いのは、ひとえに保存会の地道な活動があったためと考えられます。

高木の集落約100戸が会員となり、高木イバラトミヨ保存会を作って草刈り、害魚(マス、フナ等)の駆除等、地元で保護活動を行っています。しかし私は、今年一度も活動のお手伝いには参加できませんでした。

 刺し網でマスやフナを捕獲し、イバラトミヨを保護

刺し網でマスやフナを捕獲し、イバラトミヨを保護(2012年3月撮影)

 

県から指定されていない第2ひょうたん池ですが、イバラトミヨも生息しています。湧水確保のため、道路の擁壁を蛇籠にしています。

 

ひょうたん池

湧水確保のため道路の擁壁を蛇籠に

第2ひょうたん池下流の湧水

県指定のイバラトミヨ生息地、高木川の湧水(第2ひょうたん池下流)

 

自宅前を流れる横内堰(右)、和田堰(左)の分水水門

  自宅前を流れる横内堰(右)、和田堰(左)の分水水門(2012年3月撮影)

 

自宅前を流れる横内堰の改修工事が行われ、ボックスカルバートになりました。国道48号線の歩道2.5mの拡張工事に伴う農業用水路の改修です。(2013年10月撮影)

 自宅前の横内堰改修工事

ボックスカルバートのところどころに開口部があり、冬場は融雪溝となります。

 

捨てられた雪は押切川に放れ、また一部は倉津川にも至ります。雪に限らず各家庭には、野菜洗など雑用水として利用出来ることとなりました。

こちらの言葉で、tukaegawa と言っています。これは、「近い」と「使う」の意味があると思います。

 

現在の自宅前の水路

自宅前の水路(2014年12月撮影)

 

春になればこの農業用水路には水が満々と流れます。田んぼを潤した水は地下に潜り込み、下流のバラトミヨの生息地の扇端部で湧き出ます。

 

天童市高木地区は自然豊かな所です、一度お出かけください。

 

天童の水便り-10

山形県・天童市で農業を営む須藤敏彦さん(会員)から、桜とさくらんぼの花の季節の便りが届きましたので、掲載いたします。(事務局長:佐藤哲郎)

 

今年は、太平洋側と違い雪害は最小でした。今回は、さくらんぼの収穫時期を予想するにあたり、近くの桜や、さくらんぼの開花時期等を写真でみてみました。桜も、さくらんぼ もバラ科の植物です。

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2014.4.19 自宅近くの山口小学校の桜の咲き始め

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2013.5.4    さくらんぼの5分咲き        2014.4.17       さくらんぼ つぼみ

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2014.4.17      啓翁桜 5分咲き        2014.4.22      乱川左岸 啓翁桜 満開

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2008.6.12      佐藤錦 収穫期              2013.6.18      佐藤錦 収穫期

啓翁桜は正月用の切り花で、山形県が生産日本一です。

さて、今年のさくらんぼの収穫時期については、山口小学校の桜の開花が平年より約4日早いので、佐藤錦の収穫が、6月16日頃~になるかと思います。2008年のように特に早い年は、早生のジャボレを6月1日から出荷したことがあります。

さくらんぼの今後の作業は、開花前まで摘蕾。収穫まで防除が数回。6月初旬に雨よけテントのビニルかけ、地面に反射シート設置、そして日光をよりあてるための葉の摘み取りです。全部取ると光合成による葉への糖分蓄積が阻害されるため、小さい葉中心の葉摘みとなります。

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2014.4.17         水稲種まき

水稲は種まき後、トンネルによる育苗をおこない、田植えは5月中旬です。

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2014.4.17        もも

ももは、数日後に開花の予定で、それまでは摘擂。8月中旬~生食・加工、半々です。その他りんごも作っています。さくらんぼ、水稲、もも、りんご、いずれも平年作を期待しております。(欲張って、豊作を望みません。)

天童の水便り-9

山形県天童市にお住まいの須藤俊彦さんから、「天童の水便り-9」が届きましたので、掲載いたします。先月の大平洋側の大雪の影響で、須藤さんの自宅前を通る国道48号線の関山峠の宮城県側では、雪崩の危険を回避するため、10日間程通行止めになったということです。(事務局長:佐藤哲郎)

下の写真は、最上川左支川、寒河江川に昭和50年代に建設中の寒河江ダムの状況です。

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総貯水量約1億トン 洪水調節 発電 農業用水 そして村山広域水道の多目的ダムです。付近は 地盤が良くなく、地滑り地帯もあり、フィルタイプダムです。昭和44年の洪水が引き金となり、直轄事業で建設されました。水没集落もあり、大変難しい工事でした。

さて、2013年7月の降雨は、月山山系中心のもので、最上川左支川月布川、吉野川、 そして寒河江川に被害がありました。特に村山広域水道の浄水場にかつて無い被害をもたらしました。浄水場の取水口は寒河江ダム下流の西川町にあります。降雨強度が強く、表土の流失が大きく、取水口に予想以上の濁度をもたらし 浄水不能となりました。特に天童市はほぼ100%を村山広域水道に依存しているため 断水が約10日も続きました。自前の水源は 高擶に井戸がありますが現在は使用されていません。それに対し、山形市は自前の水源があり浄水場もあります。広域水道の依存度は約半分のため、断水は最小にとどめたのです。

寒河江ダム建設のアロケーション(費用分担)で、水道からの支出は少なくなく、村山盆地の市町村の水道代は全国でも高い状況です。天童市では断水の対策として、他市町村と水道水の融通を考えていますが、根本的解決とはいかないようです。

天童2話は変わりますが、2013年の我が家のさくらんぼの開花状況です。さくらんぼの木の上に見えるのは 雨よけテントの骨組みです。ビニールを張るのは梅雨期の6月初旬~7月上旬だけで、それ以外はビニールは外すのです。つまり、恵みの雨をシャットアウトするのです。

一見矛盾する感じですが 原産が中央アジアのさくらんぼ。収穫期に雨は必要なく むしろ雨で実割れし 売りものになりません。

さくらんぼは 自分の花粉で受粉しません。そのため主力の佐藤錦を実らせるには 受粉樹が必要となります。そのため 早生のジャボレー、 紅さやか、晩生のナポレオン、紅秀峰、大将錦などと混植しています。

また、受粉の促進のため、ミツバチ、マメコバチ、の助けを借りています。

今のところ、山梨のような雪害はなく、多少の枝折れ程度です。今年は さくらんぼが うまくいくよう 念じるのみです。(山形県天童市より 須藤俊彦)

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